オリンピックはグリーンになれない
先週から始まった夏のパリ五輪。
世界中が熱気に包まれるオリンピックは、普段スポーツに携わっていなくても胸が熱くなる展開がたくさんあり老若男女楽しめるエキサイティングな期間ですね。
日本人選手も次々とメダルを獲得し、後半戦もさらに盛り上がることが期待されています。
東京オリンピックが延期されたこともあり、4年周期を待たずの開催となった今回のパリオリピンピック。私が気になったのはもちろんこの五輪の環境への取り組み。
「The Greenest Olympics Ever(過去最高にグリーンなオリンピック)」として周知されたパリ五輪ですが、果たしてどのようにこの目標を達成しているのでしょうか。
国際オリンピック協会はパリ五輪について、ミッションの一つに気候への影響を抑えることを掲げており、節度、革新、大胆の3つの原則に則り、オリンピック・パラリンピック競技大会開催のための新しい基準を設定したと発表しています。そしてそれは、これまでの大会と比較して、カーボンフットプリント(大会に関連して排出される二酸化炭素などの温室効果ガス量)を50%にするという意欲的なものとなっています。
3つの原則【 AVOID ・REDUCE ・OFFSET 】
簡単にこの3つの原則を説明すると:
- AVOID (回避):使用する設備全体の95%を既存あるいは仮設でまかない、競技大会終了後も地域で利用できる施設のみを建設することにより、気候や環境への影響をできる限り抑制する節度のある競技大会を運営する。
- REDUCE(削減):正確に二酸化炭素排出源を把握、会場の省エネによる低炭素化、再生エネルギーの利用、持続可能な調達を行う。結果として、二酸化炭素の排出量を150万トン未満に抑える目標を設定。これは過去の夏季競技大会の平均的なカーボンフットプリントの半分以下を目指すことに。
- OFFSET(相殺):酸化炭素排出の抑制の対象範囲を最も広いカテゴリー、スコープ3まで広げて取り組む。スコープ3には、競技大会による直接的な排出(電気や燃料等のエネルギーの使用など)に加え、観客の移動や備品の配送などに伴う排出による間接的な影響も含まれる。回避が不可能な排出に関しては、世界5大陸の環境面と社会面に恩恵をもたらすよう計画されたプロジェクトを支援することによって相殺するという計画。
先進的で全く新しい試みとして多くのメディアからも注目を集めたこの原則ですが、これはあくまでも「目標」であり、世界中からアスリート、関係者、観戦客を含め30万人以上が短期間でパリ入りすることで消費されるエネルギーは莫大なものです。
グリーン(ウォッシング)なパリ五輪
<パリ五輪2024のメジャースポンサー企業>
大々的にサスティナビリティを謳うパリ五輪ですが、東京五輪と同様暑さにより体調を崩す選手が続出したり、セーヌ川での競技が直前で延期されるなど、長年の仕打ちが短期間で解消できないケースも見逃せない状態にあります。
SNSや一部メディアではパリ五輪のサスティナブルな取り組みは単なるグリーンウォッシング(サスティナブルであるという洗脳)であるといわれています。
例えば:
- サーフィンの競技会場であるタヒチでは、競技に必要とされていないタワーの建設により珊瑚礁の住処が広範囲に渡り破壊されました。地球温暖化の影響が一番に出ているといわれる海水温上昇による珊瑚礁の白化をさらに加速させる致命的な行為として地元民からの反対運動が起きました。
- 大会期間のためだけに建設されたスケートパークは環境負荷が大きいとされるコンクリートで新しく作られました。建設時に要する大量の水のほか、一度施されたコンクリート下にある植物や生命の再生は難しくとても持続可能な選択だったとは言えません。
- プロテニスの大阪なおみ選手がSNSで公開したことでも話題になった「オリンピックバッグ」はアスリートたちに贈られるウェアやギア、食材などが入ったバッグ。国によって中身が異なりますが、競技用のウェアが平均10着前後、シューズやキャップなど複数、水筒数本、各スポンサーからのノベルティグッズ、中にはスマートフォンやヘッドフォンなども。プロの選手陣、すでに必要なものは揃っているはず。これらの物資を提供する企業の本当の狙いとは?
- パリ五輪ではゴミの削減を促すことはもちろん、中でもペットボトルの消費削減を強く呼びかけています。しかし今回の五輪の最大のスポンサーがコカコーラであることに違和感を感じる流人が続出。本大会の至る所で配られる飲み物のほとんどが、ペットボトルからリユーザブルカップに移されて出されているという事実が公表され批判的な声が広がっています。
<アメリカ合衆国 男子選手団に配られたオリンピックバッグの中身>
オリンピックはグリーンになれない
皆さんもわかっていると思いますが、オリンピックのような国際的イベントだけでなく何か大きな催し物が開催されることに関して「グリーン」なことはあまりないのです。私たちが過去に参加してきたサスティナブル関連のイベントでさえ、使い捨ての嵐でした。
結果としてオリンピックは、グリーンにはなれないのです。
それでも人はアスリートたちの並大抵でない努力と実力とそこに生まれるドラマに心を動かされるし、ずっとずっと応援し続けたいと思う。彼らが最大限に輝ける舞台を奪いたいとは思わない。健全な地球無くして、オリンピックはもちろん、スポーツを楽しむことも、日常を生きていくこともできなくなる前に、私たちは今地球レベルで団結して取り組まなければいけないゴールがあります。
そういった意味では、この地球上に生きる人全てがオリンピアンであり、人間が生きられる地球環境を温存していくという一つの大きな「金メダル」に向かって誰1人諦めずに立ち向かう必要があるのです。華やかな五輪から垣間見える問題点。みなさんはどのように考えますか?
References of this blog: Scientific American, Los Angeles Times, Paris 2024 Olympics Official Site