化学の力で、地球をグリーンにする方法

グリーンケミストリーってなに?

Green Chemistry - 日本では「グリーンサスティナブルケミストリー」と呼ばれることも多いこの取り組みは、革新的な科学的解決策によって環境問題の解決を目指すものです。

製品やプロセスの環境への影響を最小限に抑えながら、社会に利益をもたらすための製品開発に取り組む、持続可能なアプローチでもあります。

私たちの生活の中でも、ざまざまな化学物質を配合した製品がたくさんあります。実際に、一つの物のライフサイクル全体で、有害物質の使用と発生を減少、または排除することを目指した製品はどれくらいあるのでしょうか?そして、一体日常の選択の中で、そのよう見分けることができるのでしょうか?

今回はグリーンケミストリーの定義をきちんと理解しつつ、身近なところに落とし込んでみましょう!

グリーンケミストリーのケミストリーの12原則

1998年に米国で提唱されたもので、現在のSDGsの根本となるほどにサスティナビリティに深く繋がる産業の取り組みです。

  1. 予防原則: 廃棄物や汚染を予防することが、それを取り扱ったり浄化したりするよりも好ましい。この原則は、プロセスを設計して有害物質の発生を最小限化または排除する重要性を強調しています。
  2. アトムエコノミー: 合成法は、プロセスで使用されるすべての材料を最終製品に最大限に組み込むよう設計されるべき。これにより廃棄物が減少し効率向上にもなります。
  3. より安全な化学合成: 可能な限り有毒で危険な化学物質の使用を最小限化または避けるべき。製品の設計と合成で毒性を最小限に抑えることが求められます。
  4. 安全性の高い化学物質の設計: 化学製品は効率化である一方で、毒性が少なく、環境への影響が最小限であるよう設計されるべき。これには低毒性の物質の洗濯を事故の可能性の低減が含まれます。
  5. より安全な溶媒と補助薬: 可能な限り、分離材などの補助薬を使用せず、使用する場合は無害であるべき。水ベースの溶媒など、より安全な代替え品が推奨されます。
  6. エネルギー効率のための設計: 化学製品の生産に必要なエネルギーを最小限に抑えるため、プロセスはできるだけエネルギー効率の高いものに設計されるべきです。
  7. 再生可能な原料の使用: 可能な限り、原材料や原料は枯渇するのではなく再生可能であるべき。これは化石燃料への依存を減少させ、持続可能性を促進します。
  8. 誘導体の減少: 不必要な誘導体化(ブロッキンググループや保護/脱保護手順の使用)は避けられるべきで、これにより廃棄物やエネルギーの消費が増加する可能性を抑えます。
  9. 触媒: 触媒試薬はプロセスの効率を向上さえ発生する廃棄物の量を減少させるため、できるだけ利用されるべきです。
  10. 分解のための設計: 化学製品は、機能が終了したときは無害な分解生成物となるよう設計されるべき。これにより環境での持続可能性が確保されます。
  11. リアルタイム分析による汚染防止: 汚染が発生する前に、リアルタイムでプロセスを監視し制御するために更に分析手法が開発されるべきです。
  12. 事故防止のための本質的に安全な化学: 化学プロセスで使用される物質や形態は、化学じこ(放出、爆発、火災など)の可能性を最小限に抑えるために選択されるべきです。

グリーンケミストリー x 身近な製品

  • テキスタイル産業

テキスタイルとは生地のことで、アパレル業界などで使用される生地の開発にグリーンケミストリーのアプローチが応用されています。デニムや革製品の有害な染料が、使用された後そのまま川や海に流れ出て、製造に関わっている人々への人体被害も出ている話は有名ですが、こういった染料をよりグリーンな化学原料を合わせて開発し、環境や人体への悪影響を減少しています。

極端な例で言えば、有害な化学物質を合成した染料で染められた衣類を赤ちゃんや乳幼児に着せたことが原因で肌荒れなどを引き起こすというケースは稀ではなく、ケミカルを含まない天然繊維の衣類や自然由来の植物性染料などを使用した衣類では、そういったことが起こりにくい、とも言われています。

もう一つの例として、アウトドアアパレルブランド・パタゴニアの先進的なデニム製造技術があります。これもまさにグリーンケミストリーを追求した環境配慮型のデニムです。

  • コスメ業界

長い間、コスメティック製品には石油由来の原料が使用されてきました。近年の脱石油ムーブメントや動物実験への反対、オーガニックやヴィーガンへの関心の高まりから、石油原料を含まないコスメ製品が急激に増加しています。これらには自然由来の原料が使われ、更には動物実験など行わずとも人体への影響が最小限であることが確信できるグリーンな原料のみで製造されるコスメ製品がたくさん選択できるようになりました。

しかし、植物由来であっても何らかの合成成分を含み環境システムを壊している可能性もあることを日本オーガニックコスメ協会は提唱しています。消費者として化粧品の安全性について更に深く認識することが大切とも言われています。

  • エネルギー産業

おそらくエネルギーが地球上で生活するすべての人に関わってくる物だと思います。グリーンケミストリー12原則の最後にもある「本質的に安全な化学」というところにもあるように、生活源であるエネルギーは本当に持続可能・再生可能でなければなりません。原子力発電や火力発電のように、後処理のできないもの、取り返しのつかない大事故に繋がるものは極めて危険性も高く、決してサスティナブルであるとは言えません。

 

もっと広めよう!

さて、この「グリーンケミストリー」というワード、持続可能な地球にしていく上でとても重要な内容にもかかわらず、SDGsほど名を馳せていないような気がしませんか?

化学物質を直接的に扱うのが産業であり、一般の生活の中あまり触れることがないので、無理もないのですが、知識として一人ひとりがもっと深く認識するべきだと思います。今後は、この原則、そして実践に関する知識を関係者や専門家にもっと教育する場を設け、意識向上をしていく必要があります。

更には、グリーンケミストリーに基づく新しい技術やプロセスがどんどん開発されるように、コストやサプライチェーンなど全体的な増加や向上も考えていかなければなりません。

今後の課題はたくさんありますが、グリーンケミストリーは持続可能性を最優先すべき現代の科学産業において最も重要なアプローチとも言えます。なので進化し続ける技術に順応しながら、これらの課題に取り組んでいくことがますます重要となっていきます!

 

参考記事:

グリーンケミストリーの12原則: https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/technical-documents/technical-article/analytical-chemistry/green-chemistry-principles

Publishing: Green Chemistry: https://pubs.rsc.org/en/journals/journalissues/gc#!recentarticles&adv

 

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