電気自動車は本当に地球にやさしい?

TOYOTAのプリウスやTeslaなど、低コストなものから高級車まで、今では電気自動車(EV)の存在は、環境にやさしい移動手段としての位置を確立しています。

国際エネルギー機関のデータ分析によると、2022年に販売された乗用車全て中で、EV自動車は10%を占め、5年前の数値を10倍以上に上回ったと言われています。

COP(国連気候変動枠組条約締約国会議) から生まれた「パリ協定」をもとに、世界中の国々が2030年までに二酸化炭素排出量を 45% 以上削減を目指すことになりました。その一つの課題として様々な国の政府が見直しているのが自動車産業。

2021年度では、日本の運輸部門の中でも家庭用乗用車は 44% の排出量を占めているのです(データ:国土交通省)。政府は2050年までにはほとんどの車を電気自動車にすると目標をたて、最近では自動車メーカーがこぞってEV車の生産に力を入れています。

全てがEVになれば、それは空気が綺麗でエコな未来。これはとても素晴らしいことのように思えます。化石燃料、プラスチックや内燃機関エンジンに頼らない社会って理想的に思えますよね。しかし、現実はそういい話ばかりではないようです。今日はEVの生産背景などについて調べてみました!


(EVのエコなイメージ 写真:https://www.hdfcergo.com/)

EVの仕組み

基本の話から始めると、通常の自動車(エンジン車)は燃料(ガソリンや軽油)を使って走る車に対し、EVはバッテリーに貯めた電気だけを使って走る車です。モーターに電気を供給するのが駆動用バッテリーです。役割は「電気を蓄えておくこと」です。現在よく使われているのは、スマートフォンやパソコンでも使われているリチウムイオン電池で、小型で軽量であるのが特徴です。リチウムイオン電池を作るために必要不可欠な素材はリチウムとコバルトです。

リチウムとコバルトの問題

2030年までに 2/3 の車が全て電気になるには、リチウムとコバルトの需要が今より 600% 以上増えると言われています。

リチウムとは地球上で最も軽い金属とされるアルカリ金属元素で、レアメタル(希少金属)のひとつ。その多くは南米のチリ・アルゼンチン・ボリビアの国境が接する場所にあり、鉱石から抽出する方法か、塩湖から地下水を大量に汲み上げ、蒸発プールで濃縮し採取する方法です。(greenz.jp) 

ハーバードインターナショナルレビューによれば、1トンのリチウムを抽出するにはおおよそ50万ガロンの水が必要であり、チリでは、その地域の水供給の65%がリチウム採掘によって消費されていることが明らかになっています。抽出作業では、大量な化学物質が土壌の劣化と、水質・大気の汚染、地域社会や生態系、地元の食糧生産に害を及ぼすと言われています。


塩湖からの採掘されるリチウム       写真:TOM HEGEN greenz.jp


(実際のリチウム鉱山)

コバルトも同じくレアメタルの一種で、サビや高温にも強く、非常に磁性が強い金属として知られています。そして、世界のコバルトの約5分の4は、コンゴ民主共和国の地下に眠っているのです。

その採掘過程では危険な労働環境や児童労働への依存など、深刻な人権侵害があると指摘されているのが事実です。米労働省は、少なくとも2万5000人の子どもがコンゴ民主共和国のコバルト採掘場で働いていると推計しており、特にコバルトは毒性が強い金属とされています。採掘しづらいだけでなく、発がん性を始め、嘔吐や下痢、皮膚炎、喘息など、長期にわたりコバルトに触れることで人体に様々な影響を与えます。

このような危険度の高い物質にもかかわらず、毎日数十万人の低賃金労働者(子供も含む)が、ショベルや素手を使って簡素なトンネルを掘り、その中に入ってコバルト鉱石を含む岩を収集する作業を行なっています。集めたコバルトは麻袋に入れられ、地元の中国業者に売り渡され、中国の電池メーカーに販売されるという流れなのです。


(写真: INFO CONGO)


(写真: Forbes.jp)

100%サスティナブル、は現状存在しない

このような背景を知ると、EVはガソリン車よりエコ(サスティナブル)である、と断言できるのでしょうか?

運転時の大気汚染排出量が削減される反面、一部の研究によれば、EVバッテリーは製造の段階で、ガソリン車に比べて高い炭素排出をもたらすとも示されています。

それだけではなく、EVの需要や必要性がこれから急増するなか、EVバッテリーがもたらす人権問題や環境破壊は、今後どのような形で社会や地球にインパクトを与えるのかは、誰もわかりません。

車を持たない、という選択肢がもちろん一番のサスティナブルアクションではありますが、自動車産業の社会的ニーズや、どうしても車での移動がライフスタイルである人口はとても多いです。ですから、もしあなたがドライバーという立場であるならば、いち消費者として、ガソリン=「エコではない」・EV=「エコ」という固定概念に縛られず、自分なりに多方面からの知識を得て納得のいく選択をしていくことが、とても大切になります。

記事参考サイト:forbes.jp, greenpeace Japan, 

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