援農で変わる!エコな暮らし方
こんにちは!エリです。
先週末は、家族で初めての援農体験をしてきました。「援農」は、一般的に農作業をボランティアとして支援することで、定期的に援農受け入れをしている農場などがあります。農家の負担軽減や地域農業の活性化、環境保護などの目的がありますが、それよりも援農する側が得られることがたくさんあります。
今週のブログでは、今回の援農内容や、日本の農業が抱える問題、お邪魔した畑が取り入れている栽培方法などについて詳しく紹介していきたいと思います!
ドリヨドリでの1日
私たちが家族で今回援農に向かったのは、私が前職で一緒に働いていたサチヨさんとその家族が2年前から始めた畑です。神奈川県の葉山町、海と山に囲まれた緑の深い場所にあり、心地よい風が抜けていて、畑の裏には大きな竹林もあります。到着してすぐに、「なんて気持ちの良いところだろう!」と大きく深呼吸をしました。
初心者で知識のない私たち+小さな子供2人なので、できることは限られているにも関わらず、ずっと行ってみたいと思っていた私の願いを叶えてくれたサチヨさんファミリーには本当に感謝です。
その日用意してくれていた作業は「開墾(かいこん)」。雑草などが生えている場所を、畑として使えるように土を掘り起こす作業です。最初は大きなシャベルを使ってどんどん掘り起こしていきますが、ある程度できたら今度は土の中に混ざっている根っこや葉っぱを取り除く細かい作業をします。掘り起こした土はすでに十分な水分を含んでいて柔らかく、みみずもたくさんいるような状態の良い土でしたが、サチヨさん曰く斜面になっている畑なので、始めた当初は上の方の土がカッチカチに枯渇していて開墾作業で心が折れそうになった日もたくさんあったのだそう。
開墾作業中、色々な幼虫が出てくるのですが、ここでは子供達が活躍。ミミズのように土の状態をよく保ってくれる虫はそのまま残して、黄金虫の幼虫などいずれ根っこを食べてしまったりする虫は、畑のない場所に「お引越し」をさせます。開墾作業は力仕事なので、子供達は基本的に畑の端っこにたくさん生えていたタンポポの綿毛やバケツの水溜りにたくさん生まれたオタマジャクシをすくって遊んでいたのですが、「お引越し案件」が見つかるたびに出動して、手でそっと幼虫たちを新しい住処に移動してくれました。
大人4人、午前中3時間ほど作業をして新しく2つの畝が完成!しばらく土の様子を見ながら、後日タネを撒いていくのだそうです。
たくさん働いた後のお昼ご飯は本当に美味しくて、家から持っていったおにぎりと、ミドリちゃんが焼いてくれたヴィーガンクッキー、ミッキーが淹れてくれた熱々のお茶もあって、私は何度も何度も「幸せ〜」と言っていました。
《写真:自然学校の先生みたいだったミドリちゃん。差し入れには BENI BITES を!》
午後は、数ヶ所あるドリヨドリの畑の中を探検させてもらい、それぞれの畑が今どんなステージにあるか教えてもらいました。「ここはこれから開墾予定」「ここはカラスよけのネットを張らないと」「ここはそろそろ収穫できそう」などなど、畑での仕事は常にたくさんあります。私たちが行った日は小春日和で畑作業をするのにとても快適な日でしたが、真冬の指先まで凍る日も、暑さで体力を奪われる夏の日も、ほぼ毎日ずっと作業をしてきたことを思うと、とにかく過酷で終わりのない仕事であることも想像できます。
「農業やっていて、温暖化を感じていない人はいないと思う」とサチヨさんが言っていて、今まで育っていたものが育たなくなったり、1年を通して気候や気温が大きく変わっていたり、常に自然との対話の中で続けていく農作業は、温暖化のような変化とも隣り合わせ、且つ直で最初に影響を受けるという事実も、印象に残りました。
地球を救う農法
ドリヨドリ(サチヨさんの畑の名前)は、農薬の力に一切頼ることのない「不耕起栽培」という農法を取り入れています。不耕起栽培は農薬を使わないこと以外にも、他の農法とは異なる点がたくさんあります。
例えば:
- 土壌を耕さずに、土中にいる有機物や微生物の力を借りることで、団粒構造が保たれ、排水性や通気性が良くなります
- 土を耕さないことで、土壌表面に植物残渣や腐葉土が残り、これが土壌の水分を保持するのに役立ちます。土の表面が乾燥しにくくなり、雨や灌漑の水分が効率よく土中に保たれます
- 農作物が育つ土壌の上に藁や乾草などを敷いて、雑草の抑制や土壌の保湿、温度調整をします。これにより土壌の耕起を避けながら、作物の育成に有利な環境を作り出せます
- 土を高く盛り上げた状態で栽培します。土を耕さず、土壌の上に堆肥や有機物を積んで高畝を作ることで、作物に最適な栽培環境を提供します
このように、基本的な農作業として知られる「土を耕す」と言う作業が不耕起栽培にはありません。私たちが行った開墾作業は一番最初に土を高く盛り上げた畝を作り、余分な根っこや葉っぱを取り除いて土壌のリセット状態を作る最初で最後の「耕す」という作業になります。農作物の育成のためにもこの作業はとても重要で、かつ時間も手間もかかります。不耕起栽培は大量生産には向きません。
《写真:収穫していいパクチーとその間にコンパニオンとして生える植物たちの見分け方を教えてくれているサチヨさん》
不耕起栽培がうまくいくと、土壌の健康状態はとてもよくなり、結果長い間同じ土壌からたくさんの農作物を収穫することにつながります。一握りの健康な土の中には、世界中の人口数以上の微生物がいると言われていて、この微生物が豊富な土壌環境を守ることで根本的な環境の回復・保全にも大きく繋がっていきます。
現に、土壌は、二酸化炭素を大気中から取り込んで貯蔵する非常に重要な炭素貯蔵庫です。中でも、不耕起栽培や有機農業は、土壌の炭素貯留を高めるとされているため、不耕起栽培で農作物を育てることは、地球温暖化の対策に直結しているのです。
日本から畑がなくなる?!
《写真:援農後、収穫させてもらった野菜をサチヨさんから直接購入!採れたて野菜とはまさにこのこと!》
日本の農業従事者の平均年齢は年々増加傾向にあり、2023年には69.2歳で、全体の70%が65歳以上でした。高齢化社会の中の最大の課題の一つと言っても過言ではないほどで、日本の受給率は元々低かったところから農林水産省の令和5年度(2023年度)の発表によれば、食料自給率は38%でした。
世界の他国と比べると、例えばフランスやインドは自給率がほぼ100%、中国は95%、アメリカは85%で、広大な敷地がある国が多いとはいえ、その半分以下にも満たない日本では敷地面積以外にも課題があることは一目瞭然です。このままでは、気候変動による食糧危機を待たずに、日本では自給率が0%になってしまいます。
高齢化以外にも、日本の農業には問題視されている点がたくさんありますが、もちろん改善策もあります。
- 若い世代が新規就農者として始めるための負担を軽減する支援金や助成金を増額。その中で専門的な知識を得られる研修プログラムを充実させ、就農後も技術支援や経営相談などのサポート体制をしっかりと確立させます
- 労働力不足を補い、農業の効率化と省力化を図るICTやロボット技術を活用したスマート農業の推進。自動運転の重機や収穫ロボットの導入、ドローンセンサーを使った土壌のモニタリングや、AIによる生育状況の分析で適切な農作業のタイミングを把握します
- 農業法人を活性化し、複数の農家が協力して農作業を行う「共同農業」を推進。例えば、農業の機械や施設を共同で利用することで、コスト削減が可能です。
- 高齢化が進む中で、後継者がいない農家に対して、地域の他の農業者や新規就農者に農地を譲渡できるシステムを確立。また、高齢者でも農作業を継続したい人に補助機器やロボットなどを提供する支援をします
- 「農業」の社会的価値を高めるため、積極的に教育内容に取り入れていきます。学校や大学での農業教育の充実させ、農業が持つ可能性や魅力を若者に伝える取り組みが重要です
このように、異なる複数の観点から「今までのやり方」を180度変えていかない限り、日本の農業は衰退していくばかりです。
援農から見えた、エコな暮らし
普段は高層ビルなどが見える、いわゆる「都市」で暮らしている私ですが、車を30分ほど走らせればドリヨドリのような畑に足が運べる環境は、これからも継続していきたい「エコな暮らし方」の一部になり得るな、と今回の援農を通して感じました。
都会暮らしの中で自然に触れ合う機会が圧倒的に少ないと、大人も子供も健康・精神状態に大きく影響がありそうですが、逆に自然に触れることで得られる健康・精神状態へのメリットは計り知れません。
2007年にイギリスの研究者が発表した研究によると、土壌に含まれるマイコバクテリウム・バイカリウムという微生物は、免疫系に影響を与え、ストレスを軽減し、気分を向上させる作用があるとされています。
マイコバクテリウム・バイカリウムは、皮膚に触れることで体内に取り込まれ、脳内のセロトニンのレベルを上げることが示唆されています。セロトニンは「幸せホルモン」として知られ、気分を安定させる役割を持っています。運動をした後や、日光を浴びた時、リラックスした時に出るのもセロトニンです。土に触れることでも同じホルモンが分泌されることが科学的に証明されているんですね。
《写真:採れたてのスナップエンドウは、生で食べられるほど甘い!》
実際に、開墾作業を行なっている時、何気ない会話をしながら作業をし土の香りを嗅いで、風を感じて、陽を浴びるだけで、自分がみるみる元気になっていくのを身体中で感じたのです。言葉では表すのが難しいエネルギーが、体の奥の底の方からじわじわと出てくるような、小さな心配事や体の不調が思い出せなくなるような、不思議な感覚でした。
さらには、その時に自分は土や虫や農作物に触れ、それら全てがそこに居合わせている奇跡を目の当たりにすることで、普段自分がどれだけたくさんの存在に支えられた上で、地面に立っているかに改めて気付かされたのです。今まで環境のため、自分や家族の健康や未来のため、とコツコツと積み重ねてきたエコアクションやゼロウェイストな選択は決して無駄ではなかった。今ここにある奇跡のような自然の力を守っていくために、必要不可欠なことだったと思うことができたのです。
私の体内で確実に、大量のセロトニンが分泌されていたんですね!一緒に援農を堪能した夫と後日、「あの時の感情はどう表現すればいいんだろう」という話になり、「豊か」という表現がピッタリだねと言っていました。
もっとミニマルに
今までは、小さなベランダのプランターで何かを育てたり、観葉植物を家の中で育てたりして植物の育成を楽しんでいましたが、今回の援農を通して、楽しむことだけではなく、農作物の生きる力が自分が行動する原動力になるということを新たに感じることができました。
もちろんこれからもスーパーで野菜の購入もするし、大量生産と常に隣り合わせの都会暮らしをしていくけれど、それでも私は土や農作物の本来あるべき姿を自分の目で見て、肌で感じることができたおかげで、今までよりももっとシンプルに、多くを望まない豊かな暮らしができると確信しています。
百聞は一見にしかずなので、これを読んだみなさんにもぜひ一度、お住まいの地域での援農をお勧めしたいです!
今回私がお邪魔したドリヨドリでは、郵送でお野菜セットの購入もすることができます!自分自身が不耕起栽培の畑を持たなくても、そういった畑で野菜を定期的に購入することで継続するためのサポートができます。援農の受け入れは不定期、且つ畑の状態と相談しながらなのでタイミングが合えばドリヨドリでの援農も可能かもです。お問い合わせはドリヨドリのインスタグラムから直接できます!アカウント→https://www.instagram.com/doliyodoli_yo/