《続》オリンピックはグリーンになれない

今月6日に開幕したミラノ・コルティナ冬季五輪。

次々にメダルを獲得する日本人選手の活躍も目立ち、オリンピック開催中はスポーツ観戦により熱気が集ま李ますね。

今回の記事が「続編」なのは、オリンピックのサスティナビリティに関して最初、2024年パリの夏季五輪のことを書いたからです。(その時の記事はここから

オリンピックが「グリーン」になれない、というのは、環境保全を優先して開催することがほぼ不可能である、という意味をなします。今月22日まで開催される、今回の冬季五輪に関しても目を逸せないさまざまな問題に直面しています。

足並み揃う、気温上昇

ここ数十年の平均気温の上昇は世界的に見て明らかな通り、コルティナ地域も例外ではありません。イタリアンアルプスに囲まれ、世界遺産に登録されているドロミテ山塊のど真ん中に、コルティナは位置しています。かつて街は雪のブランケットを被ったような冬でしたが、70年代ごろ冬の平均気温がマイナス7度前後だったのに対し、現在はマイナス2度前後。

ウィンタースポーツや冬季オリンピックの開催に欠かせない「雪」は、もちろん足りていない状況で、人工雪を追加しないとゲームなどが開催できない状況です。

人工雪に必要とされる水の量

今季のオリンピックでは、人工雪の製造だけで8,480万立方フィート(約240万立方メートル)の水が必要になると推定されていました。これはなんと、オリンピック公式プール約380杯分に相当!

イタリアの環境活動家であり、環境団体による監視グループ「Open Olympics 2026」のメンバーでもあるファビオ・トゥリオさんは、この水がアルプスの川や渓流から取水されることも説明していました。

ドロミテ山脈を流れ下るボイテ川が通るコルティナ郊外の一角、かつて手つかずだった景観は、今では建設現場と化し、伐採された木々が脇に放置され、地面は掘り返されています。近くでは発電機がうなりを上げ、川のせせらぎをかき消しながら、ディーゼルの臭気を高山の空気に漂わせている現状です。

オリンピックゲームで必要な人工雪は、この川から水を吸い上げ、斜面へ送り上げる黒いプラスチック製のパイプを通って製造されます。公式発表によれば、この取水量は毎秒約95リットルにのぼると言われています。

そして、これらのインフラ整備が地域の生態系や生物多様性にどのような影響を及ぼすのかを十分に理解するための詳細な調査は、実施されなかったようです。
実際に、公開されている資料によると、五輪に向けて承認された約98の事業のうち、60%以上については、包括的な環境影響評価が行われていなかったことがわかりました。

古き良き街は失われた

今回の冬季オリンピックでは、既存の競技会場が主に使用されていますが、五輪関連の資金計画のもとで事業が承認されたことで、この農村的な土地に多くの新たな建設が持ち込まれました。
大会運営を担うシミコ(Simico)は、道路や駐車場など、五輪終了後もしばらく完成しないインフラも含め、建設中の施設は地域住民にとって有益になると述べていますが、住民の声は異なります。

木の壁が印象的なアルプス様式の伝統的な地元カフェで、コルティナ・ダンペッツォ市議会の野党代表であるロベルタ・ザンナは、多くの住民がこうした「開発」を望んでいないと語りました。
環境へのさらなるダメージにつながり、農村的なアルプスの暮らしが都市化してしまうことを懸念しているのです。
こうなれば、街や住民は自分たちのアイデンティティを失ってしまうことにつながるからです。

気候変動による気温上昇で、コルティナではスキーができる環境そのものが失われつつあり、さらに山岳の生態系もすでに観光による負荷で限界に近づいてきています。
このような状況下で、これ以上の建設、人工雪の増加、高級ホテルの建設、そして冬季オリンピックがもたらすさらなる観光客の増加は、今最も必要とされていないこと、なのではないでしょうか。

だからオリンピックは「グリーン」になれない

今回の大会も、オフィシャルスポンサーは見慣れたメンバーが揃っています。パリ五輪の時とほとんど変わりませんが、コカコーラ、アリババ、ビザなど、トップ企業が名を連ねます。

アメリカチームのアスリートたちが受け取る「オリンピックバッグ」にも数え切れないほどの新品ウェアやアイテムが入っています。

スポーツを楽しみ、競い合い、分かち合うオリンピックですが、この開催における人の移動、地域のインフラ、お金が落とされる場所など、どの方向から考えても、オリンピックは環境に良いイベントにはなり得ないのです。

自分たちが活躍するフィールドが失われることを願うアスリートは、1人もいないでしょう。私たちは一体あと何回、騙し騙しのオリンピックを開催していくのでしょうか。

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