山火事レポート:気候変動で制御不可能に?!
今年の夏も、世界中で山火事のニュースが相次いでいます。特にヨーロッパ、スペインでは東京23区の約8割に当たる規模が消失、ワインで有名なフランスのボルドー地方では代々続いてきたワイナリーや歴史的な村や農村景観が、大規模な山火事により消失してしまいました。
私が現在滞在しているカナダを含む北アメリカも、連日山火事のニュースが絶えません。夏は気温が高く空気が乾燥する気候のため山火事自体が非常に起こりやすく、自然現象の一つでもあります。しかし、近年の山火事は森の再生が追いつかないほど頻繁に発生し、さらには地元の消防が抑制できないほど危険な規模になっています。
そして日本でも近年、大規模な山火事が発生しています。「遠い国の出来事」ではなくなりつつある今、私たちはこの現実をどう受け止めればいいのでしょうか?

山火事:世界で何が起きている?
今年は、
- 🇫🇷 フランスで記録的な熱波による「前例のない大規模」火災
- 🇪🇸 スペインでも乾燥した森林で山火事が拡大
- 🇨🇦 カナダでは数百件規模の山火事が発生し、都市部を含む多くの地域で避難指示
- 🇺🇸 アメリカ西部でも例年どおり山火事シーズンが深刻化し、近隣の住民は空気汚染により外出ができなくなる日々が続く
地球上の複数の大陸で大規模化する山火事について専門家たちは、気候変動による高温や干ばつが「山火事が広がりやすい条件」をつくっていると指摘しています。
日本も例外ではない

(写真:2025年の岩手県の山火事)
高温で乾燥している=山火事が起きやすくなる原因とされますが、「日本は湿度が高いから大丈夫」というわけではありません。近年は、日本でも大規模な山林火災が発生しています。
2025年には岩手県大船渡市で平成以降最大規模の山林火災が発生。2026年にも岩手県で大規模な火災が起こり、多くの住民が避難しました。
しかし日本の場合、北米などと違い自然現象(落雷など)によって起きる山火事よりも、人為的な原因で起きることが9割と言われています。夏の風物詩となっている花火や蚊取り線香、アウトドアのBBQやキャンプファイア、農作業の一環とされる火入れ(野焼き)、タバコのポイ捨てなど、ちょっとした不注意によることが原因とされています。
このような場合、本来は大規模な山火事などにつながることは少なかったのですが、近年日本では40℃以上を「酷暑日」と呼ぶ新しい区分が導入されるなど、猛暑が新たな日常になりつつあります。また、湿度が高くても雨が長期にわたり降らず、強風などが起きた場合は、こういった小さな火種も大規模な火災へと発展してしまうのです。
気候変動との関係

ここで大切なのは、「気候変動が直接的に山火事を起こしている」というわけではない、ということです。山火事の原因は、
- 落雷
- たき火
- 人為的な火
などさまざまです。しかし、気温の上昇、積雪や雨の少ない期間の長期化、高温による森林の乾燥、強風など、このような条件が重なることで、一度火がつくと昔よりも大規模な火災へ発展しやすくなっています。日本の場合は特にですが、発火の原因が人であっても、被害を拡大させる原因は気候変動が後押ししている可能性がある、という感じです。
私たちの暮らしとのつながり
実は先週、私も山火事を目の当たりにしました。
この夏滞在しているバンクーバーから車で3、4時間のところに「オカナガン」というワインの葡萄がたくさん育てられている地域があります。アメリカでいうナパバレーのような感じで、たくさんの素敵なワイナリーがあり、美味しいワインを求めて夏には観光客がたくさん訪れます。ワイン畑があるということは、冬と夏の寒暖差が激しく、非常に乾燥した気候であることが条件なので、オカナガン地方の人たちは、毎年起きる山火事も配慮しながらワインの製造をしています。昨年のワインは特に山火事の影響を大きく受けたところが多く、ワインにも「スモーキー」なテイストが残ってしまったものが多かったそうです。
今回もいくつかのワイナリーを訪れたのですが、ちょうど到着した2日ほど前から小さく発生していたいくつかの山火事が、滞在中三日間の間にみるみる大きくなり、帰る日にはオカナガン地方とバンクーバーをつなぐメインの高速道路3本(といってもほとんどが山間)のうち、2本が閉鎖されてしまったのです。下の写真は唯一残ったハイウェイで帰る途中に撮ったもの。実際は写真よりも視界が悪く、後ろから迫り来る煙から逃げるように車を走らせました。

それまでは、空がなんとなくガスっているくらいの煙だったのが、バンクーバーに帰る日の朝起きてブラインドを開けると、数百メートル先も見えないほどの煙。外に出ると、空から白く細かい灰が舞い落ちてきていて、停めていた車は灰だらけになっていました。私たちは無事バンクーバーまで戻ることができましたが、その地方に住む人たちは、一部地域では避難指示が出され、別の町の避難所に移動して、消防隊が近づけないほど大きくなってしまった火災の自然鎮火を待つため、いつ自宅に戻れるかもわからない生活を強いられることになっていました。
この地域の住民は、山火事になれているため、避難所の設営もかなり手早く、すでに避難所に物資が届いてるところなども見えたので、災害時のインフラが整っていることには感心しました。日本も地震が非常に多い国ですが、その他の自然災害に対する対策はどの程度あるでしょうか。
山火事は、森林だけの問題ではありません。
大量のCO₂やPM2.5が放出され、空気、水、生態系、農業、私たちの健康にも影響を与えます。そして、気候変動はこういった異常気象の頻度を上げたり、規模を巨大化したりすることを促すため、非常に悪循環な状態が世界中で起きています。私たちが当たり前に暮らしている環境は、災害により一瞬で目の前から消えてしまうのです。
一人一人には何ができる?

もちろん、一人の力で山火事を止めることはできません。
でも、毎日使うものを少し見直すこと。使い捨てを減らすこと。長く使えるものを選ぶこと。破棄するものを減らし、水や電気、資源を温存する暮らしを心がけること。そんな小さな選択が、資源やエネルギーの消費を減らし、未来の環境負荷を少しずつ減らすことにつながります。
環境問題は、ときにスケールが大きすぎて、自分には何もできないと感じてしまうことが多かったり、自分ごととしてスケールを落として捉えることが難しいことがあります。個人的には、「子どもたちに今ある環境を残す」という使命を感じて日々挑戦している部分が大きいです。人によっては、大切なペットのためだったり、クライマーやサーファーであれば、そのスポーツができる野外環境を守るため、といったようにそれぞれが「個人的な理由」を持って環境保護やサスティナビリティについての考えを持つことが、実際にアクションに繋げやすいと感じています。
変化は「知ること」から始まります。
環境問題は、未来の話ではありません。今日の選択が、10年後、20年後の暮らしにつながっています。だからこそ、完璧ではなくても、小さな一歩を積み重ねていきたいし、後悔だけはしたくないですよね。
今年も世界で起きている山火事のニュースを、ただ流れていくニュースとして終わらせるのではなく、「私たちの暮らしとつながっている出来事」として考えるきっかけになれば嬉しいです。