美容とゴミのツレない関係

2021年、新しい年が明けてから、minimal living tokyo.では新たな製品カテゴリーとして「コスメティック」を取り入れました。
「必要最低限のもので、ミニマルに暮らす」と言うことがひとつのモットーでもあるminimal living tokyo.から、いきなりオシャレ度の高いコスメ製品が販売されるって、どういうこと?!と思われた方もいるかもしれません。
普段からゴミ問題に着目することの多い私たちにとって、コスメ業界から排出されるゴミの量は一度知ってしまうと目を逸らし難いものでした。この世にこれ以上のコスメやセルフケア製品は必要ありません。しかし、今現在存在するありとあらゆる製品の中でも、使い心地や効果などを一切妥協せずとも環境に負荷のない、極力ゼロウェイストに近いものがあることを皆さんに知ってほしくて、新たにコスメティックというカテゴリーを取り入れました。
もちろん、誰にでもセルフケアをする権利があり、コスメを楽しむ権利もあります。しかしそれによる代償はあまりにも大きく、この業界のプラスチックゴミ排出量はパッケージだけでも世界第2位となっています。1人でも多くの人に今すぐにでもこの問題への加担からシフトできるように、今日はコスメティック業界のゴミ問題について詳しく書いていきます。
毎朝使う洗顔ソープから、就寝前に髪を洗うシャンプーまで、美容やパーソナルケア製品は私たちの生活の中心部に欠かせないものとなっています。一般に、女性は毎日16種類以上ものパーソナルケア製品を使用していると言われ、これはカミソリやブラシなどのアイテムを省いた数字です。これらの製品がそれぞれ約30日間使われているとすると、平均で10年間に使用し破棄する製品は1人当たり約500以上という計算になります!世界中で多くの人がこのようなパーソナルケア製品の消費スタイルを送っていると考えると、コスメ業界が年間に1200億以上の製品を生産している理由も納得が行きますね。信じ難い事実ですが、この1200億の製品のうち95%は一度きりの使い捨て製品なのです。日本国内に限っても、美容・コスメ業界は年間2.2兆円を超える規模で、アメリカ、中国に次いで世界第3位に位置しており、この数字は現在も右肩上がりとなっています。先進国ではさらに美容やコスメに関するニーズが増え、より多くの人が簡単に高品質の製品を手に入れることができるようになったことで、需要がさらに増え続けると、例えば10年後はどんな問題が生じてくるのでしょうか。パーソナルケア製品によるプラスチックゴミが、業界第2位にランクインしているのも、驚きません。
しかし、パーソナルケア業界も最初から使い捨てプラスチックゴミを大量に出していたわけではありません。日本では明治時代に化粧品メーカーが存在していました。そして、その市場は70年台から80年代にかけてさらに市場拡大していきました。プラスチックという素材が爆発的に利用されるようになる前、60年代〜70年代は、ほとんどのケア製品が固形で、浴槽や川など、当時人々が体や髪を洗う場所で沈まないように浮かせることが目的でもありました。そして大抵それらの固形石鹸などはガラス容器などに入れて保管されていました。しかし、浴槽や川などの利用からシャワーなどを使った「洗い流す」スタイルが増え始めると、製品もそれに合わせた「流せるもの」=「リキッドベース」のものへと変化していったのです。固形から液体へと変わったことで、持ち運び方や梱包ももちろん変化し、安価で中身が漏れない、長期保管が可能なプラスチックは、言うまでもなく瞬く間に主流の素材となりました。今日に至り、現在地球上にあるプラスチックゴミの40%はパッケージによるもの。悲しいことに私たちが住む日本は使い捨てプラスチックゴミの量においても世界で第2位の排出量となっています。プラスチックゴミの40%がパッケージからくるもの、と言いましたが、そのパッケージごみにおいてはなんと70%が日本で破棄されている量と言われています。そしてその大半がパーソナルケア・コスメ業界から出されるものなのです。日本国内の、この問題が非常に深刻なのは、数字を見れば一目瞭然です。
このような深刻な事態を受けて、業界内では様々な変化も起きています。LOOP(現在はアメリカ国内のみ)では、メーカーと顧客の間に容器回収システムを導入し、回収した容器にはまだ製品を入れて配達すると言うサービスで、メーカーに回収や再利用可能な容器の開発と利用を促すとともに、消費者にもリフィルシステムを定着させ全体のゴミの量を減らす目的があります。また、メーカーによっては店頭で容器を持参してそこにリフィルするシステムを導入しているところもあります。
他にもいろいろな問題に着目し行動に移しているメーカーがあります。例えば大手コスメブランドLUSHでは、ほとんどの化粧品やパーソナルケア製品の7割から8割の原料が水であることから、そこに必要とされる水の量や、輸送時にかかる環境負荷を考え、多くの製品を水分を省いたものとして製造しています。固形で凝縮されたタイプが多く、中でも一般のシャンプーやコンディショナーは約9割以上の原料が水であることから、固形に変えることでプラスチックのパッケージを利用することも必要なくなりました。LUSHに続き、最近ではいくつかのメーカーも同じように水分を省いた製品の開発を進め販売を開始しています。また、最近ではパッケージをプラスチック製のものから紙ベースへとシフトし使用後にコンポスト可能にすることで、使い捨てされるゴミを大幅に削減するメーカーも増えてきています。しかし、このシフトにはコストもかかってきます。従来のプラスチックパッケージに比べると、生分解性の段ボール素材などを使用した紙製のパッケージは、バージンプラスチックの60倍以上のコストがかかります。(ガラス製は約10倍)これは中小メーカーにとっては特に高く、リスクもある選択ですが、それでも環境を守ることの優先順位を高く捉えこういったパッケージにシフトしていく会社が増えているのです。
近年では、大手コスメティックのロレアルが2025年までに全ての製品のパッケージをリサイクル可能・リフィル可能に変えると宣言しています。日本は世界の動きと比べるとだいぶ遅れをとっていて、容器回収やリフィルシステムはまだまだ整っていません。いくつかの企業では、バイオプラスチックを取り入れたパッケージの開発が進んでいますが、これが大きな変化として目に見えて現れるにはまだだいぶ先のことと考えられます。バイオプラスチックの導入が期待されている反面、増え続けるプラスチックゴミの問題の直接の解決策にはなりません。
本当に必要な変化を起こすには、業界が一丸となって生産することの責任を見直す必要があり、消費者に対して最終処理の方法を押し付けることをやめなくてはいけません。しかし、私たちはみんな一消費者としても同じくらい大切な「消費する責任」があります。
まず、現状の消費生活を見直しましょう。そして、生産者に供給を求めるため、消費者として本当に良いものを需要しましょう。バスルームに使いかけの製品を数種類置くのではなく、シンプルに一つのものを最後まで使い切り、その後で次に本当に必要なものは何か、を慎重に考えてみましょう。新しいものを購入するときは、良いものを選びましょう。たとえ少しコストが高くても、環境に配慮しなるべくゴミにならない製品を生産する会社から購入しましょう。その時、そうでないものを選ぶことは将来的にさらに大きな代償となって自分に返ってきます。
正直な話、地球はこの現状にもう何年も耐えられる環境にありません。今この記事を読んでいる瞬間にも、何万、何億と言うパッケージがゴミとして放出されているのです。何か大掛かりな素晴らしいシステムが整うことを祈って待っているだけでは、もう収まらなくなっているのが現実です。
一般的に成人は、1日平均3万5000回「選択」をしていると言われています。あなたはそのうち何回、「正しいもの」を選択できますか?意識をほんの少し変えるだけで、見えてくるものも得られる結果も大きく違っていきます。コスメやセルフケア製品に限らず、毎日の消費全てにおいて自分の選択を意識していきましょう!
"ZEROWASTE ALL THE WAY." - Axiology
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1件のコメント

  • 毎週メルマガ楽しみにしています。
    とても勉強になります。オーガニック生活便でよく買い物をしていたのですが、プラスチックの容器が当たり前のように使われていてそれはどうなのだろうと思っておりました。シャンプーの中身は欲しいけど、それについてくるプラスチックはゴミになるだけ‥この現状をなんとかしたいなぁと思っています。しかし、私は何者でもないので消費者としてそういう物を選ばない、買わないというのが環境のためになっているのかなぁと思っております。
    オーガニックの製品自体はいい物だと思いますが、とても残念です。

    永田

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