Jane Goodal: 地球と対話した奇跡の人

2025年10月1日、アメリカ・カリフォルニア州にて講演ツアー中、眠るように安らかに逝ったジェーン・グドール、享年91歳。

この報道を受け、世界中のメディアや著名人たちを含め、私たちのような一般市民も皆、喪に服している。

ジェーン・グドールとは、一体どんな人だったのか。追悼の意を込めて、彼女の素晴らしい人生について少しだけ書かせてください。

"Tarzan married the wrong Jane"

ジェーンは1934年、イギリスで生まれケント州という田舎で育ちました。物心ついた頃から彼女の動物に対する興味と愛情はとても深く、何時間もの時間をかけて「観察」することがジェーンの遊びでした。読書をすることも大好きで「Dr.ドリトル」シリーズや「ターザン」を何度も読み、物語の中での動物たちのふれあいに影響を受け「いつかアフリカで動物たちと暮らしたい」と夢見るようになりました。

ジェーンには群を抜いた探究心があり、彼女の溢れ出る「なぜ」や「どうして」を家族は温かく見守りサポートしたことで、のちに世界的な霊長類学者として名を馳せることとなるのです。

ジェーンはよく、「ターザンは結婚相手に間違った "Jane" を選んだわ」と冗談を言っていたのは有名な話です。

研究者としての道

ジェーンは1960年にタンザニアのゴンベに行きました。当時若干26歳だったジェーンには、助手もいなければ研究者としての学位も持たず、彼女が試みようとしていた研究は異例でした。しかしジェーンが着目した動物「チンパンジー」において、彼らが生活の中で「道具」を使うことを発見。これにより道具を使って暮らすのは人間だけ、と思われていた常識が覆されたのです。

その後もジェーンはチンパンジーたちの生態について研究を続けましたが、他の研究機関が対象動物を番号で区別するのに対し、彼女はそれぞれのチンパンジーに名前をつけ、「研究対象」としてでな「命ある動物」として向き合い、個性・性格の観察、チンパンジーとの信頼関係を築き上げ、私たち人間の動物たちに対する偏見や見方そのものを、根本から変えて行ったのでした。

「動物にも感情がある。私たちがそうであるように、彼らにも痛みや喜びがある。」

ジェーンにとって、同じ地球で暮らす動物たちに尊敬と愛情を持って向き合うことは「当たり前の感覚」でした。

環境活動家ジェーン・グドール

チンパンジーの研究を続けていくうちに、ジェーンは避けられない悲しい事実に直面します。

世界の産業が発展していく代償として、アフリカなどの発展途上国では深刻な森林破壊・密猟・貧困が進み、ジェーンが愛したチンパンジーたちもみるみるうちに命を奪われ絶滅危惧種と呼ばれるようになって行ったのです。

この現状を目の当たりにしたジェーンは、「霊長類学者」という分野だけでは、この問題の解決に繋げることが難しいと感じ、次第に地球規模で問題に取り組む「環境活動家」として名を馳せるようになり、2002年には国連の平和大使にも就任しました。

ジェーンは環境問題に取り組む中で、若者たちへの教育に着目しました。

1991年、ジェーンは青少年のための国際的な教育・活動プログラム「Roots & Shoots」をスタート。このプログラムは、世界中どこにいる子供達でも受ける権利があり、 地球・動物・人間社会すべてをつなげて考え、行動する力を育てることが大きな特徴です。

動物や環境からの学びを通し「思いやりと共感を育てる」、自分で気づき、考え、「行動する力を育てる」、それを踏まえた上で本当に持続可能な社会づくりに貢献できる、このように地球全体を視野に入れた教育です。

初めはタンザニアにいた12人の高校生からスタートしたプログラムが、現在では100カ国以上・数十万人の子供や若者たちが参加し、学校内だけでなく、地域団体・家庭・オンラインなど、さまざまな形で活動しています。

ここ日本でも、「ジェーン・グドール研究所日本」が窓口となり、全国でプログラムが実施されています。学校・地域のグループ・個人単位でも参加可能で、環境教育・ESD(持続可能な開発のための教育)に関心のある教員たちや保護者にも広がっています。

ジェーンは全ての命の架け橋

“The natural world has the answers. If we listen quietly, we’ll realize everything is connected.”

「自然の中に答えがある。静かに耳を澄ませば、すべてがつながっているとわかる。」

1年のうちの300日以上を研究や講演活動に捧げ、変わりゆく自然環境の中に身を置いていたからこそ、ジェーンのこの言葉には非常に重みがあります。

特に現代社会を忙しなく生きる私たちは、仕事や育児に追われて忙しい日々や、都会の中で暮らす日々の中では、自然の中に身を置く機会も少なく、「自然の声に耳を傾けること」など、やり方すら知らないのかもしれません。

ジェーンはそんな私たちのためにも亡くなる前日まで、耳を傾け、心で向き合い、地球の鼓動、叫び、悲しみ、訴えを世界中で伝え続けてくれた、まさに地球とそこに暮らす全ての命の間の「架け橋」であったのです。

ジェーンには、伝えたかった知識やメッセージがまだまだ計り知れないほどあったように感じますが、これからは彼女が残してくれた全ての偉業をもとに、今生きている私たちが未来に繋いでいくことが義務となります。ジェーンがもうこの地球に暮らしていないことは、本当に悲しいですが、彼女の深い愛情に見守られながら、これからの生き方・選択をするにあたり、背筋がスッと伸びるような思いもあります。

残された人間には、共通した使命がある。

“Every day you make a difference. Every day you have a choice: to harm the planet or to help it.”

「毎日、私たちは地球を壊すか、癒すかの選択をしている。」

Jane, hope you are reunited with all your loved ones, including the chimpanzees, playing and laughing and soaking up all the nature that you so much devoted yourself protecting. Please rest in peace.

1件のコメント

  • ジェーン・グドールさんが亡くなったことはとても悲しいです。ここにも書かれているように、残されたわたしたちがこの住んでいる地球🌏で何をするべきなのかを今一度、立ち止まって考え、行動にうするべきですね。

    『自然の中に答えがある。静かに耳を澄ませば、すべてがつながっているとわかる。』

    北原りさ

コメントを残す

コメントは表示される前に承認される必要があります。